れおこがたり 第3回 ~非対称マルチプレイヤーゲームの沿革と展望~
「EVOLVE」というゲームをご存知だろうか。
「EVOLVE」は1体のモンスターと4人のハンターに分かれて戦い、最終的に相手を殲滅することを目標にする非対称マルチプレイヤーFPSだ。
2015年2月にリリースされたものの人口に伸び悩んだ結果2016年7月には基本プレイ無料の「EVOLVE Stage2」としてリブート。
しかし流出する人口に歯止めを掛けるには至らず、最終的には2018年9月にサービス自体が終了してしまった。
美麗なグラフィックと斬新なゲームプレイ、さらに古来から隆盛を極めてきたFPSというジャンルの組み合わせは当時大きな話題を呼んだ。
しかしながら、非対称性というのは得てして不便なものだった。
だが今回の記事は「EVOLVE」ひいてはマルチプレイゲームにおける非対称性の良し悪しについて述べるためのものではなく、非対称性を軸にしたゲームの歴史について述懐するためのものなので「EVOLVE」の不満点等々(同様に良かった点も)については割愛させていただく。どうかご理解いただきたい。
さて、本題に入ろう。
「Dead by Daylight」
このゲームについては知っている方も多いだろう。
花江夏樹や狩野英孝が(大はしゃぎしながら)大立ち回りを演じる姿をSNSなどで見かけた方も多いかも知れない。
「Dead by Daylight」は殺人鬼と生存者に分かれて戦う非対称TPSで、精力的なアップデートの甲斐もあり発売以来多くの人口を獲得、今も人気のゲームとなっている(さらに「Identity Ⅴ 第五人格」などのゲームに要素は受け継がれることとなった)。
この「DbD」がきっかけで非対称性マルチプレイヤーゲームというジャンルが一大ブームを築き上げたように思う。
必ずしもプレイヤー同士が対称的でなくとも良いという "発見" はマルチプレイヤーゲームにおける大きな知見であり、進歩だった。
(余談ながらマリオパーティには1:3の非対称性をウリにしたミニゲームがいくつか収録されていた。今振り返って考えると慧眼だ)
さて、非対称性のマルチプレイヤーゲームの中にはアナログでありながらも由緒正しいゲームが実は存在している。
「人狼」だ。
「Among US」
先ほど本題と言ったが私が真に注目したいのはこの部分、もっと具体的に言うと「人狼」はそもそも非対称性を軸に据えたゲームであるという点だ。
代表例として「Among Us」を取り上げる。
「Among Us」は宇宙船で繰り広げられる人狼だ。
スマートフォンからも遊べる敷居の低さ(しかもPCやSwitchとのクロスプレイも可能だ)とどこか愛くるしいキャラクター、豊富なルールカスタマイズシステムが好評を博し、宇宙人狼は全世界を席巻することとなった。
人狼は村人を殺害するべく行動するが、各々の役職を持つ村人と人狼はそれぞれゲーム内で取れる行動が違う。
これこそ非対称性でなくてなんだと言うのか。
余談だが「人狼」の起源は1986年にロシアのモスクワ州立大学に通う学生が考案した「マフィア」というゲームであると言われている。
言うまでもなく「EVOLVE」や「DbD」よりも歴史のあるゲームだ。
沿革そして展望
「EVOLVE」で話題を提起し、「DbD」でさらにデザインの可能性を広げ、「Among Us」に帰着する。
(「EVOLVE」はまさに "進化" の礎だったのもどこか皮肉めいているもののドラマを感じてしまう)
こういった歴史の流れというものは私個人の目線からすると大変に興味深いものだ。
同時に「人狼」という起源への回帰は必然だったのかもしれない。
だが、おそらくゲームに非対称性を盛り込む試みはまだまだ終わらない。
現在このジャンルのゲームは「Fryday the 13th:The Game」「Predator:Hunting Grounds」「バイオハザード レジスタンス*1」「DOOM Eternal*2」といった様々な方向性で "進化" の形を見せている。
「Among Us」すらもひとつのマイルストーンとして、これからもジャンルは邁進していくのだろう。