れおこがたり 第2回 ~「HALO5:Guardians」 感想~
ストーリーの要約
任務中に消滅したはずのコルタナの幻影を見たマスターチーフ。彼が率いるブルーチームはUNSCを無許可で離隊し、コルタナを追うべく惑星メリディアンに眠るフォアランナーの巨大なドローン「ガーディアン」に搭乗。
ブルーチームを拘束すべく組織されたファイアチーム オシリスはメリディアンでブルーチームを取り逃がしてしまう。
一方ガーディアンを通してフォアランナーの惑星「ジェネシス」に到着したブルーチームはコルタナに接触。
コルタナが何らかの陰謀を進めていることを知ったUNSCはオシリスに惑星サンヘリオスのガーディアンの奪取を命じる。
ガーディアンになんとか飛び乗ったオシリスはジェネシスに到着。
道中で出会ったジェネシスのモニター「イグズーベラント ウィットネス」と協力しながらブルーチームがいる「ゲートウェイ」に向かう。
コルタナの目的が寿命を克服したAIによる宇宙の管理支配であることが明らかになる中、コルタナを説得しようと試みるマスターチーフ。しかしコルタナの意志は変わらずブルーチームは拘束されてしまう。
ブルーチームを解放するべく奮闘するオシリス。イグズーベラントの協力もあり間一髪でブルーチームをコルタナから救い出すことに成功する。
ブルーチームはオシリスと共に帰還した。だが時を同じくしてUNSC最大の戦艦「インフィニティ」はコルタナの攻撃を受け、インフィニティの艦長ラスキーはコルタナに対抗するべく作戦を立案する。
5年越しの再会
HALO5:Guardiansは2015年10月27日に発売されたゲームだ。
5年前のゲームとは思えないカットシーンのクオリティなのはこれを見ている方々にもきっと賛同してもらえると思う。下の動画ではないのだが、E3でトレーラーが公開されたときの胸の高鳴りは今でも鮮明に覚えている。
さて、肝心のゲームの内容についてだが、当時としてもやや賛否割れていた気がする(なにせ5年前の記憶なのでかなり曖昧なのは許してほしい)。
明確に批判が集まったのはジェムソン・ロック率いるファイアチーム オシリス、ひいてはマスターチーフの扱いについて。
HALOシリーズは1~4までマスターチーフが主人公でありプレイヤーキャラクターだった。アービターと共闘することこそあれど。
しかしながら、HALO5はどうだろうか。
ブルーチームを操作できるチャプターは全14個のミッションのうちたったの3つだけ。
HALO5は一見するとロックに焦点を絞ることでシナリオの空間的な拡張を図ったように見える。
異なる人物の視点から物事を解釈するというのは既存の多数のコンテンツにおいても重要な意味を持つというのはこれを読んでくださる方々もご存知のことだと思う。
しかしながらHALO5に関してはロックはそこまで魅力的に描かれているようには感じないのだ。残念ながら。
もちろんカットシーンはカッコいい。だがそれはあくまでオシリスがコヴナントやプロメシアン相手に戦う姿がカッコいいのであって、ロックの人間性的な観点での魅力には一切貢献できていない。
ロックも優秀なスパルタンであるというのはゲーム内外で描写されてきたものの、彼は外伝を除けばHALO5が初出のキャラクターで、プレイヤーからすればあまりにも情報が不足している。
魅力を感じないのはロックだけではない。マスターチーフらブルーチームもだ。
なにせ本作を象徴するような印象深いセリフやセリフを伴うシーンというものをほとんど思い出すことができないのだ。これでキャラクターの魅力を語るというほうが無茶というものだろう。
総じてHALO5はキャラクターの掘り下げについてはおざなりだったと言わざるを得ない。
ただし唯一例外なのはジェネシスのモニター(管理AI)「031 イグズーベラント ウィットネス」だ。
彼女はオシリスと邂逅してからというものの戦闘中に至るまでとにかくよく喋る。
機械ゆえに生命体に対してドライな対応を見せながらもどこか人間味に溢れる彼女の個性的な振る舞いは多くのプレイヤーの心を掴んでいた。
もちろんFPSというゲームジャンルでプレイ中にセリフを配置したりといったシナリオのデザインが難しいのはなんとなく理解はできる。
しかしだからこそ、カットシーンに関しては強い印象を与えるべく創意工夫を凝らすというのが今まで(具体的には1~3)やってきたことではなかったのだろうか?
加えて私自身はシナリオについてもやや懐疑的だ。
(固有名詞が多い割に本編中でもあまり説明されないというのはHALOシリーズ通しての悪癖なので今回は不問とする)
コルタナを追うマスターチーフとそれをさらに追うオシリスという構図自体は良いのだ。
発売前のイメージやキービジュアルではロックがチーフを追い詰めるかのような宣伝が為されていた。
しかしながら実際にロックとオシリスが戦うのは「未確定」のラストだけ、しかもロックはチーフのヘルメットに傷を与えることにこそ成功したものの、チーフを追い詰めるには程遠くなんなら返り討ちにあってしまう。
チーフの「格」を保ちたいというのは理解できるのだが、先述した通りこのゲームのほとんどはロックを操作することになる。
言うまでもないがロックにも「追う者」としての「格」を与えられてないというのはシナリオ全体を通して極めて致命的だった。
ゲームプレイについて
(今回はキャンペーン、つまりはソロプレイを前提としたモードについてのみ触れる)
HALO5のキャンペーンモードはオシリスもブルーチームも4人1組で行動するのがゲームを通しての特徴だ。
ロック(マスターチーフ)を操作し、ほかのメンバーに指示を出すことである程度AIによるプレイを制御し、戦闘を有利に進めることができる。
しかしながら、基本的にAIの頭があまりよろしくない。
もちろんFPSにおけるAIのプログラミングはおそらく極めて困難な作業なのだと思う。古今東西、今も名だたるFPSにおいても、優秀なAIとはあくまで限定的な状況下でのみ作用するものだろう。
にしてもせっかく4人で行動するのだからこのあたりはもっと工夫を凝らしてほしかったと思ってしまう。
AIの頭がよくないならAIと関係ないところで「協力している感」を演出してほしかった。もちろん ”複数のデバイスを同時に操作しないと開かない扉” に類するものなどはゲームのスピード感を大きく損ねるためこのあたりも難しいのだとは思う。
総評
グラフィックは間違いなく綺麗だが、シナリオ重視のFPSとしてはまだ完成には至っていない、というのが私の結論だ。
先ほどから述べている通りカットシーンのクオリティには眼を見張るものがある。
ゲーム中では説明しきれない、シリーズの裏側に位置する世界観も須らく重厚なものだ。
しかしながら、世界観やシナリオをシステムに落とし込む行為であったり、ゲームプレイそのものにまつわる体験であったりといった部分でやはり完成されたゲームとは言い難い、というのが現状での私の評価だ。
次回作「HALO Infinite」は21年秋に発売予定だが、HALO5からさらに改善されたゲームプレイ、シナリオに触れられることを切に願っている。